降り積もるように

悲しくても、笑うことは出来る。
思い出さなければ、忘れていられる。
でも、日々の暮らしの中に組み込まれた愛情は、
ふとした瞬間に、呼吸するようによみがえる。
「精一杯」をあげられたのか、と、自分に問うと、
どうしても後悔が浮かび上がる。
自分を納得させるための言い訳も、他人の言葉も、
どちらもただ、痛みをほんの少し和らげるだけ。
そんなふうに降り積もった悲しみは、
やがて時を経て、心の底に沈殿し、
いつか、優しい想い出へと、色を変えていくのだとしても、
今、この手のひらの喪失感は、流れる涙を受けとめるだけ。