自転と公転


今日は、『アンナ・カレーニナ』を観てきました。
地元でお芝居を観るなんて、初めてなんじゃないか、って感じなんですが、
お芝居だと思って行ったら、ミュージカルだったんですよね・・。(;^_^A
いや、だって、演出が鈴木裕美さんだし、小市慢太郎さんとか出てるし。
でも、主役が一路真輝さんで、井上芳雄さんが出てる時点で気付くべきだったのかもしれないんですが、
観てたらいきなり歌われたんで、ビックリしちゃいました。はは。
でも、地方公演なのに、ちゃんとオケ(と言うかピアノと弦+αの極小編成)を入れてて、
歌い出しとかがきちんとしてたのが、すごく好感持てました。
あと、やっぱりさすが鈴木裕美さん!で、ちゃんと役のひとりひとりにキャラクター付けがなされてて、
人柄がね、きちんと伝わるように作られてるのがいいなぁ・・って。
まぁ、本来ミュージカル俳優じゃない人達も出てるので、歌はそこそこ・・な方々もいましたけど、
でもちゃんと役柄として歌ってる分、いわゆる“ミュージカル!!”より伝わるものがあったし。
でね、私、井上さんの歌を初めて聴いたんですけど、上手いんですね、彼。
ちゃんと歌で演じられる人なの。
で、まぁ、キャラクターの強みもあるんだろうけど、歌声と台詞の声に差を感じないから、
すごく安心して観ていられるんですね。
和音美桜さんもそうだけど、きちんと声で表現が出来る人の歌って、すごくすんなりと聴けるんですよね。
ただ、井上さんの場合は、なんて言うか、人柄が今イチ伝わってこない、かなぁ・・。
人柄って言うのは、本人の人柄じゃなくて、役の人柄ね。
気持ちは伝わるんだけど、背景が見えない、と言うか。
アンナのどこに惹かれているのか、どんな仕草を愛おしいと感じてるのか、周りの人達をどう思っているのか。
なんかね、そういうのが感じられなくて。
でも、他の役も観てみたいって思いましたよ。うん。
でね、すごく好きだったのは、アンナの夫のニコライ・カレーニン
気持ちを表すのが苦手な頑固親父、って感じで。
親の愛情を知らずに育った弊害かなぁ、とか、色々想像させてくれるキャラクターで、
彼を中心に、物語りを作ってみたら面白いんじゃないかな・・なんて思いました。
あと、音楽がすごい良かった!
作曲の方は、セサミ・ストリートの企画に関わってたりもしてる方みたいなんですが、
すごく心情的なメロディが多くて、仰々しくなくて好きです。
ちょっと歌うには難しいけど、訳詞もすごく歌いやすくつけてあるし、譜面欲しいなって思いました。
あ、一路さんも歌巧かったですよ。
まぁ、「宝塚歌い」的ではありましたけど、元々男役の方なのに、きれいなソプラノで、表現力もあるし、説得力もあったし。
全体的に、きちんと人間が描かれていて、大御所ミュージカル観るより面白かったです。
そうそう、葛山(信吾)さんが、声が通ってて、しかも歌も結構うまいのでビックリしました。
もっと声の浅い人だと思ってたんですが、なかなかどうして、舞台向きで。
コミカルなお芝居もハマってたし。
あと、小市さんが面白かった!!
前にやっぱり、鈴木さんの演出で、紀伊国屋ホールかな? 芝居に出てて。
行きたかったんですけど、都合がつかなかったので、今回、初・小市さんだったんですけどね。
やっぱ、役者さんだなぁ・・と思います。
舞台の空気を知ってる人。
ホント、役者さんが皆さん、すごく個性的だったので、楽しかったです。(^^)v


こういうの観ると、役者ってやっぱり、伝えることが大事なんだなって思います。
役柄の人生をね、自分を通して伝えようとすることが大切なんだな、って。
その役の人生のホンの一部だけど、そこから広がる何かを、伝えていくことで、
この世の中に起こっている様々な出来事を、本来の自分の視野以外から、捉える機会を与える、って言うか。
『魚屋の気持ちは、八百屋にはわからねぇ』ってね。
でも、わかるように伝えるのが、役者の仕事、かな。
だからこそ、巧いとかヘタとか、感じさせちゃいけないのかも。
ただ、そこに在る存在。
そして、存在を体現する媒体。
シンプルだけど、深いね。