混在する光の反射色

『東京タワー』、観てきました。(遅い?)(笑)
なんと言うか、映画らしい映画だな、と。
結構、【これって別に映画で撮らなくてもいいんじゃない?】的な映画って、時々あったりするんですけど、
『東京タワー』は、映画として観せるためにつくられてるなぁ、と。
そういう意味では、映画館で観たい作品だと思うし、映画館のスクリーンで観るほうが、より伝わる作品だとも思います。


で、江國さんの原作だから・・かどうかはわかりませんが、言葉で伝えよう、と言うか、
言葉に依ってるとこが結構あって、「せっかく映像なんだから、そんなに言葉を並べなくてもいいのに」
なぁんて、ちょっと思ったんですけどね。
ドイツ人でもフランス人でもいいんですけど、わりとよく、哲学とかから言葉を引用して、普段の会話の中で使うじゃないですか。
例えば、以前何かで、“もはや愛しもせねば、迷いもせぬ者は埋葬してもらうがいい”っていうゲーテの言葉が引用されてたことがあって、私はすごく心に残ってるんですけど、
そういうのがね、現代の日本人だとやっぱり、言葉だけが浮いちゃう感じがするんですよね。
太宰治とか、夏目漱石なんかの世界で、言葉にこだわったものをつくるのは、味があっていいんですけど、
ものすごぉく現代的な世界で、やたら哲学的だったり思想的だったりする言葉を使われても・・。
と、私は感じました。
フッと思いつくような言葉ではないんですよね。
所々出てくるモノローグみたいなセリフ。
熟考され、選ばれた言葉ってカンジがする。
“恋はするものでなく落ちるものだ”っていうのも、すごく巧く出来た短歌みたいだし。
これが、“恋をしてるって言うより、ただ「落ちた」って気がするんだ”とかだったら、
まだリアリティあったかな、って。
だから、最後のほうで、フランス人の女性が言ったセリフは、逆にすごく印象深い。
普段からそういう思想的なものを身にまとってる感じがするから、かな。


ま、作品の印象は、そんな感じです。
役者さんでは、寺島さんと平山あやちゃんが印象的でしたね。
2人とも、可愛くて恐くて、「女」だなって思いました。
女性の色んな面が描かれてますよね。
綺麗なとこも醜いとこも、可愛いとこも、うっとおしいとこも。(笑)
出てきた女性それぞれが、それぞれの役割を担って、表してる。


最初に原作を読んだ時、これって主役は耕二なんじゃないの・・?
って思ったんですけどね、実は。
実際、映画で追加したみたいなラストシーン(パリでの再会)がなかったら、
耕二と彼を取り巻く女性達の話、みたいになってると思います。
それを、詩史と透を主人公として描くことで、純愛性を強く打ち出して、
映像とのバランスをとってるカンジがする。
で、耕二を演じる松本くんについては、
“ゾクリとするような、きな臭さ”が、ちょこっと出てたかなって思います。
私が以前、松本くんから感じていた、「甘味」みたいなものはなくて、
(この甘味が強いと、耕二がただのダラシナイ男の子になっちゃう)
全体として、私が原作から感じた以上に、優しくてさみしがりな耕二で、
そこにちょっとスパイスがきいてるってカンジ、かな。
私は、もう少し突き放したような印象を原作から受けていたんですけど、
松本くんの耕二からは、受け入れる強さみたいなものを感じました。
やっぱり、演じ手によって解釈や表現も様々で、
それを観客に伝える説得力が大事なんだな、と思いましたね、ハイ。
舞台も頑張って下さいね。(⇒松本くん)


そうそう、この映画で、ブルーにライトアップされた東京タワーを初めて見ました!
一度間近で見てみたいものです。(New Yearだけなのかしらん)